某は、世の中に何を訴えるでもなく、
歯車のひとつどころか、それを留め置くネジにすぎなく
この家の嫁で、明るい未来を約束してくれる子らの親で、ある人の妻で、
今は自分を抑えている、一人の女でありまして。
かと言って、男とか女とかは、その存在が必要な時だけに必要なもので、
紅茶を飲む時だけに必要な砂糖のように
舐め尽くしたいと思う程の甘さを併せ持っていたいと
幾つになってもドキドキする心は溶けてなくならないのでございますが
その実、数ある星の中の一人間にすぎないのが世の常で
今の段階でも、自分とは、まだまだ未熟きわまりない収穫された硬いサトウキビか、もしくは白い砂糖になる前の黒砂糖のようで、
砂糖どころか、目の前の紅茶をつついて、つい零してしまったりするのがおちなのです。
素直になれず
そんな自分を認めたくなく…
今宵も
また砂糖は要らないと
静かに湯気を立てて
ただ
ティーソーサーの上に佇む紅茶を
遠くから 想うのでありました。
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